たった2日で読み切ってしまった…!活字に苦手意識を持つ私にとっては快挙(笑)。
柚木麻子さんの『ナイルパーチの女子会』は、本当にいろんなことを考えさせられました。女同士の人間関係、人間の黒い部分、家族や友達のこと、などなど。読了後はぼーっと余韻に浸れるボリュームたっぷりの作品です。
なにより柚木麻子さんによる、主人公の心情を水の中にいるかのように例えた表現が瑞々しくて好きです。本のタイトルにあるナイルパーチ(魚の一種)や主人公・栄利子が働いている商社で取り扱う水産物に掛けているのだと思います。統一感があり、なるほど勉強になります。
主人公の栄利子と翔子それぞれの弱い部分にドキッとしてしまう
この作品を読んでいると、主人公たちと自分を重ね合わせてしまい、胸が苦しくなりました。
主人公・栄利子の、友達がいないというコンプレックスを持ちながらも、完璧でいようとする姿。
高校生時代、クラスの女子がどんどんグループ化していく中で私は取り残され、人間関係に悩んでいた時期がありました。楽しく過ごしていた中学生時代とのギャップが情けなくて恥ずかしくて、幼馴染や家族にはそれを打ち明けず強がっていたのです。
「この子こそが友達だ!」と思って頑張って仲良くなろうとしても、なかなか思うように上手くいかない。バカ真面目に考えすぎる私はまさに栄利子でした。
そして栄利子が焦がれる存在となる主婦ブロガーの翔子。彼女の、家族に関わる面倒なことから顔を背ける姿。
どんどんたまっていく郵便物や大学生時代の頑張らなかった就活など。特に就活なんて自分の人生なのに、どこか他人任せな感覚でした。本当に情けない(笑)。
そんなところが翔子に似ているかなあと、よくドキリとしていました。
自分の弱さに気付けたぶん人は変われる
物語の終盤では、栄利子も翔子も自分の弱さを認めて変わろうと努力します。序盤で栄利子がストーカー気質になっていたので、破滅の一途をたどるのではないかとひやひやしていましたが、バッドエンドじゃなくてよかったあ…(笑)。
自分の弱さに気付けた分人は変われる、逆に気づけないと変われない。変われるチャンスがあるなら克服しよう!とこの本が教えてくれた気がします。
私も栄利子と翔子に負けないくらい力強く生きようと思います。
女性キャラクター全員にそれぞれの魅力が
柚木さんの作品はいじめや人間関係、女の黒い部分をピックアップしている作品が多いと思います。その中でもこの作品は、出てくる女性キャラクター全員に惹かれてしまいます。
栄利子が翔子をストーカーした理由が、運命共同体的な女友達を渇望していて、心のよりどころがなかったからだと知ると、不気味な印象から繊細な人間という印象に変わり、愛らしく思えました。
あまり好きでなかった人の心を覗いてみると、急に愛おしく思えて、冷たい態度を取った自分を悔やむこと、ありませんか?私はあるあるです。
物語は人間のドロドロしたシーンもありますが、人間関係に悩んでいる方が読んでも安心。(むしろ読んだ方が良いかも?)物語最後の、栄利子の幼馴染・圭子の言葉にみんな勇気づけられるはずです。
自分と似ている栄利子と翔子が、今でも元気に過ごしていることをつい願ってしまいます。
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